07/05 2017
吊編み機は今から約110年前、日本で初めてヨーロッパから
和歌山へスイス製の編み機を導入された、丸編み機の原点の機械です。
以来、機械に改良を加えて独自に発達し、
和歌山で最盛期には数千台が稼働する日本一の産地になりました。
しかし1970年代に入ると採算性の高い高速機が登場し、瞬く間に消えていったそうです。
現在では和歌山の3社での工場でしか稼動していません。
また当時は別名「スイスツール」と呼ばれ、
アメリカ、中国に現在数台あるトンプキン編み機とは
構造は異なります。
元来、天竺組織のみしか編めず、
戦後に高級肌着を編む為に使用され、
和歌山の職人が天竺以外の組織も編めるように改良をして
裏毛などのスウェット生地が生産出来るようになりました。
吊り編みは文字通り、吊るしたままゆっくりと、空気を含ませるように編み立てます。
編み目にゆとりがあるため着る人の体型になじみやすく、
洗濯を繰り返しても硬くなりにくいという特性も発揮します。
つまり着るほどに、その人らしい服に育っていくのが最大の特徴になり、吊り編みの職人はよく〝生地が生きている〟と話します。
ただ現在では実際に操作出来る職人は5人しかいません。
現存する編み機は、現代では製造するメーカーもない大変貴重なものになり、
編み針以外の部品は、修理も新調も不可能な部分になります。
だからトラブルを起こさないよう、調整するのも技術者の技になります。
最も気を遣うのは機械の「遊び」だそうで、約200個の部品と千数百本の針がバランスよくかみ合うために必要な、わずかな隙間の調整だといいます。
それは個性のように機械一台ずつで異なるため、時間も手間も掛かりますが、同時に吊り編みならではの風合いを生み出す源でもあるのです。
技術者が一台ずつ、まるで機械を励ますかのように見回り、手を掛ける様子は、動力こそ電気ですがまさに手仕事に近いように感じます。
和歌山の中でも、吊り編み機を稼働しているのは、
全ての編み機を合わせても、300台くらい
です。
ヴィンテージのスウェットでよく吊編み機で作られたと思われがちですが、ヴィンテージのスウェットはトンプキン編み機で編まれたもので、
吊編み機自体はもっと古く、そして現在、和歌山の職人が大切に育ててきた機械、技術になります。
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